2025年12月22日@八代

 

(事務局より、会場内での諸注意に関するアナウンスが放送された。)
本日はご来場いただきまして誠にありがとうございます。開演に先立ちまして、お客様にお願いを申し上げます。
会場内でのご飲食はご遠慮ください。ご飲食はホワイエをご利用ください。また、会場内は全面禁煙となっております。おタバコは喫煙所にてお願いいたします。ゴミはお持ち帰りをお願いいたします。
携帯電話など音の出る機器は公演の妨げとなりますので、電源をお切りになるか、マナーモードへの設定をお願いいたします。
定刻通りの6時30分より開演いたします。今しばらくお待ちください。
 

定刻を迎え、司会の高野愛氏が登壇。手話通訳者の紹介と共に、本フォーラムは厳かにその幕を開けた。
高野 愛 氏(司会): はい。改めまして皆様、こんばんは。 本日は平日の夜分にも関わらず、たくさんの皆様に足を運んでいただき、誠にありがとうございます。
ただ今より、第1回小野大輔フォーラムを開催いたします。本日、手話通訳でお手伝いをいただきます、手話通訳士の大竹秀夫様、園田く子様、どうぞよろしくお願いいたします。
そして私、司会を務めさせていただきます高野愛と申します。このお時間が皆様にとって有意義な時間となりますよう精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
高野氏の進行により、主催者を代表して小野大輔後援会会長の上野文氏が登壇した。
 

主催者を代表し、小野大輔後援会会長である上野文氏が挨拶に立った。夏の選挙戦を懐かしむ季節の話題に触れながら、本フォーラム開催の趣旨と、八代の未来を担う市長への期待を語った。
上野 文 氏(小野大輔後援会 会長): 皆様、こんばんは。 寒くなりましたですね。あの暑い夏は本当に数ヶ月前なんですけれども、私たちは本当にもう真っ黒になって、今日もまだその名残りが残っておりますね。あの日々をどうやって過ごしたのか、私自身振り返るととても懐かしく、そしてもうはるか昔のことのようにも感じます。
今日は第1回目のフォーラムでございます。市長がこれから何をなさりたいのか、どんな風にこの八代を牽引していっていただけるのか、そういうお話をぜひ伺いたいと思います。
皆様、今年の夏、邦画をご覧になりましたか。随分と話題になった映画がございました。舞台には主役が変わり、脇役も変わり、次の幕へと変わった状態です。今まさに八代もその状態だと思います。私たちが思いを、みんなの思いを継いで、この小野市長を八代に、という感じでみんなで押し上げて、そして今日はその1回目のフォーラムでございます。
本当にこの寒い中をお越しいただいてありがとうございます。そして今日は皆様もお気づきでございましょうが、遠方よりゲストをお迎えしております。これまで民間でこの八代をずっと牽引してくださったお二方でございます。後ほど、司会の方からきちんとご案内があると思いますけれども、そういう方の貴重なお話を伺って、そしてこれから先の私たちの八代へと、思いを繋いでまいりたいと思います。
どうぞ、今日はですね、1時間弱ぐらい、市長のお話、お時間ありましたら質疑応答も数名の方からお伺いできるかなというふうに思っております。もう本当に手作りの準備でございましたので、何かと行き届かない点がたくさんございますけれども、どうぞ最後までごゆっくりとお過ごしいただきたいと思います。
本日はご来場、誠にありがとうございます。
上野会長の挨拶を受け、プログラムは来賓挨拶へと移った。最初の登壇者は、株式会社藤永組の藤永勝俊代表取締役会長である。
 

4.1. 株式会社藤永組 代表取締役会長 藤永 勝俊 様

最初の来賓として、八代の地域社会に深く根差し、経済活動のみならず文化振興にも尽力してきた株式会社藤永組の藤永勝俊代表取締役会長が登壇。挨拶では、特に日奈久地区を「花と音楽の町」として活性化させるための具体的な市民活動について、熱意を込めて語られた。
藤永 勝俊 氏: はい。皆さん、こんばんは。 お話しするのが一番苦手な私でございます。なんでご指名があったのか分からないでまだおりますけども、そういうことで持ってまいりました。お聞き苦しい点があろうかと思いますけども、どうかよろしくお願いいたします。
本日、このような時間をいただき、そしてまたこのようにお話をさせていただきますことに御礼を申し上げます。ご紹介させていただきますが、今ご紹介の通り、株式会社藤永組の藤永勝俊と申します。会社はですね、創業138年になっております。この138年は私の努力でできたものではなく、八代の仲間の方々に支えていただいたと、感謝申し上げる次第でございます。
今、民間で盛り上げるということでございましたので、倫理法人会で色々活動している話を紹介させていただきます。私たちの会の中に、日奈久をどうにかして元気づけるようなことをして応援していきたいという部会がありまして、私もその気持ちに賛同いたしております。
日奈久を活かして盛り上げていきたいなというふうなことで、地元の皆様方もそう思ってる方々がたくさんいらっしゃいますし、その気持ちを一つにして、地域の皆様方の熱意を結集して、そして市外からお客様を呼び込む。ぜひ日奈久に遊びに来てほしいな、日奈久の町を応援してくださいね、と言っていただけるような、そういう町にしなくちゃいけないなという思いでおるところであります。
そこで、私どもが取り組ませていただいておりますのが、日奈久のテーマとして「花と音楽の町」というものを設けまして、花いっぱい運動などをやらせていただいております。おかげさまで、熊本県の方から花の苗、球根、種をいただいております。日奈久の空き地にご相談しながら花を植えさせていただく運動をしております。
花が咲いた時には、必ず皆さんの絶え間ない笑顔、そして思いやりが生まれます。花を育てることによって人々の心が和らぎ、その思いが伝わっていくことで、この運動が出来上がっていくのではないかと捉えております。
また、「花と音楽の町」ということで、音楽祭もやらせていただいております。先日も温泉神社で桜の木を7、8本植えさせていただきました。これは紅しだれ桜という花で、4、5年すると結構大きくなるらしいです。その後、温泉神社の境内にある土俵のところで音楽祭も開かせていただきました。その音楽祭には、地元の八代出身でクラシック歌手の岩本貴文(いわたかふみ)さん(※登壇者発言のまま)が歌声を届けてくださいまして、有料だったのですが250名ぐらいの方がお見えになりました。岩本さんも「こういうふうに日奈久が盛り上がるなら私も協力しますよ」というお言葉をいただいております。
そしてまた、ご存知のブーゲンビリア通りがございます。地元の吉田さんという方が20年近くずっと植えて育ててこられた、言うなればブーゲンビリア並木、ブーゲンビリア通りが出来上がっております。このブーゲンビリアは赤色、ピンク色、紫色、黄色など6種類の色があり、非常に明るい色ばかりです。先日、地元の皆さんと一緒に近くの公園の整備をさせていただきました。今後は、観光客がお見えになって憩えるような、お弁当を食べたりできるような場所も作っていきたいなと構想に入れております。
このような繋がりを持って、地元の皆さんと共に汗を流し、日奈久の町が明るく元気で前向きに取り組んでいただけるような、そういう雰囲気を醸し出していければと思っております。このブーゲンビリアの花言葉は「熱心」という言葉があるそうです。この花言葉のように、地域の皆さんの情熱が芽生えていければいいのかなと思っております。
今まではどうだったかではなく、今からどのようにしていったら栄える町になっていくかということだけを考えて取り組んでいこうと。今までのことは全部捨てようと。そういう気持ちで街づくりに励んでいこうということで取り組んでおります。
この地元での活動を進める中で、小野市長をはじめ皆様のお力添えをいただくことが多々あろうかと思います。その際にはどうか温かいご支援をよろしくお願いいたします。
先日、市長様のお言葉の中に、蒲島知事さんからいただいた言葉を紹介したいと思います。 「期待値を超えよう。そうすれば次の舞台が用意される」 という言葉でございます。本当に、私どももこの日奈久の町、そして八代が発展するためには、そこに住む人たちの気持ち、そして思いやり、そういうことをお互いに出し合って、責めることなく盛り上げていく。そこに「期待値を超える、そうすれば次の舞台が用意される」という言葉を胸に、私どももこれから努力して取り組んでいかなければいけないと思っております。
本日はどうもありがとうございました。

4.2. 株式会社松木 代表取締役会長 松木 一俊 様

続いて登壇したのは、八代の物流と経済を牽引してきた株式会社松木の松木一俊代表取締役会長である。東大卒で若くスタイルの良い小野市長とは「似ているところが何もない」とユーモアを交えつつ、「よそ者」という共通点を挙げて会場を和ませた後、「八代の発展は港と共にある」というテーマを掲げ、壮大なスケールで八代の未来を語った。
松木 一俊 氏: 皆さん、こんばんは。ただいまご紹介をいただきました、株式会社松木の会長をいたしております、松木一俊と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
少し自己紹介ですが、私のところは昨年100周年を迎えました。今年は101周年ということで、記念というわけではありませんが「車 松木」という社章に改め、私も社長を息子に譲りまして、新たにスタートをしてございます。
実を言いますと、小野さんは県庁職員時代から存じ上げておりました。東大卒で、スタイルはいいと。私に似ているところは何もない。あるとすると、一つは「よそ者」です。小野さんは東京大都会の出身、私は本県阿蘇郡という山の中の出身でございます。
ただ、小野さんは4月20日生まれ、私は4月30日生まれ。2人とも牡牛座です。私よりも24歳年下。24歳年下ということは、寅年です。これも一緒です。血液型は、私はA型です。これは違います。
さて、今日のお話ですが、私はちょっと港の話をしようと。「いつの時代もこの八代は港と共にある。八代の発展は港が鍵を握る」こう思っております。
八代は近世、徳富津という世界と繋がる港がありました。しかし、土砂の堆積や港湾改修がないまま、いつの間にか消えてしまいました。近代になりますと、殖産興業ということで、明治23年(1890年)に日本セメントが八代に来た。これが一つの画期でございました。その後、大正13年(1924年)に現在の日本製紙の前身である東肥製紙が坂本に、九州で最初の製紙工場としてできました。
戦後、日本製紙が原料のチップや燃料の石炭を海外から入れるようになり、港が内航から外航へと変わっていきました。それを基軸に、八代には日曹人絹パルプ、昭和産業、そしてYKKと続いてきました。
その後の転換期がマルベニです。マルベニグループが八代の港に目をつけ、中九州の畜産のために海外からトウモロコシなどの飼料を持ってくるようになりました。日本製紙のチップ輸送により水深10mバースができ、マルベニが来たことで、さらに大型の船が入れるよう水深14mの岸壁が必要になりました。この水深14mの埠頭ができたことで、八代に大型クルーズ船が来るようにもなったのです。そして令和2年には「くまモンポート八代」ができました。令和3年からは台湾とのコンテナ航路も始まっています。
これから申し上げたいのは、今後の八代です。4つの重要な要素があります。

  1. 日本製紙の事業構造転換 もはや媒体は紙ではなくなってきています。八代工場は、2年後には家庭紙を中心とした輸出用の工場に切り替わります。来年から世界各国から製造機械が入るための準備が進んでおり、2028年には大きく変わります。
  2. TSMCの波及効果 熊本工場では最先端の半導体が作られるようです。そうなりますと、高圧ガスや化学薬品といったものが八代港に届き、利用されるようになります。県南にもその効果を与えようと、鏡町に工業団地が作られます。
  3. ニュー鹿島(工業用地)の活用 八代は日本で2番目の木材輸出港で、約50億円の原木を中国や台湾、韓国へ輸出しています。この原木を製品にして付加価値をつけて売ろうという企業、日本の製材加工最大手である中国木材が、ニュー鹿島への進出を検討しています。2029年頃の操業予定で、大きな雇用も期待されます。
  4. 国際的な知名度向上への提言 八代はまだ国際的な知名度が不足しています。私の個人的な夢ですが、八代は九州の中心にあるのだから「九州中央港」と名前を変えたらどうか。もう一つは、八代インターから八代港まで高速道路を延伸できないか。わずか10kmです。これにより、災害時の物資輸送路を確保し、観光客の利便性も向上します。

八代は今、事業構造転換が必要な時期に来ています。その時に、小野市長が八代にやってこられたことは、非常に嬉しいことです。一方で、市長は災害対応や様々な問題に直面し、本当に大変な思いをされています。
今、支持率の高い政権には「支持率」が出ますが、八代には「支持率」が出ません。ではどうするか。市民の意思をどのような形で表すかが非常に大事ではないか。市長は「行政評価システム」を取り入れようとしています。市長がそれをやろうとしているならば、我々市民がそれに対して反応する。市長と市民がキャッチボールをする。そして民意を盛り上げる。これが市長を支える唯一の形ではないでしょうか。
打てば響く八代市民。市長とのキャッチボールをちゃんとやっていく必要があるのではないか。このように思った次第でございます。非常にだらだらと長い話になりましたが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
経済界の重鎮二人からの力強いエールを受け、いよいよ本日の主役である小野大輔市長が登壇した。
 

本フォーラムの主眼である小野大輔市長の講演が始まった。就任3ヶ月、災害対応や情報公開請求への対処に「鬼のように」時間を費やす多忙な日々を送る中、市長はまず市政運営の基盤となる組織改革への断固たる決意を表明。その上で、港湾、産業、観光、農林業など多岐にわたる分野での具体的な発展戦略を、市民との協働の重要性を強調しながら熱く語った。
小野 大輔 氏(八代市長): 皆さん、こんばんは。 今日は、本当に八代の経済界を代表するお二人に、最初にご講演、そしてご挨拶をいただきまして、ありがとうございました。
また、本日は手話通訳の方々にもしっかりとお伝えをいただき、ありがとうございます。先日の議会でも正式に答弁いたしましたが、どのような方々であってもコミュニケーションがしっかり行える八代をつくることは大事なことだと考え、手話言語条例の制定に向けて具体的に動いていきたいと思っております。
就任して3ヶ月が経過しました。私の中では「まだ3ヶ月なのか」という印象です。というのも、相当な仕事量をやっていまして、毎日朝から晩までびっしりと予定が入っています。思えば、就任する前から災害が起き、就任してからもすぐに対応をしなければなりませんでした。
この3ヶ月、市役所の中で仕事をしてきて感じているのは、市役所の職員の皆さんは本当に真面目で優秀だということです。ひたむきに仕事をしてくれています。私が県庁で12年働いた経験と比べても、遜色ない優秀で立派な職員さんがたくさんいます。大事なのは、そうした職員の方々がどうすればモチベーションを上げて、市民のためにちゃんと仕事ができるか、その環境作りです。
そのために、まずは市役所の環境を整えることに注力します。その一つが、私がコンプライアンス改革と位置づけているものです。法令に則って適切に仕事ができる、違うと思えばそれを指摘できる環境と空気を作りたい。来年度には、公益通報の通報先を完全に外部の第三者にも開かれた形にしていきます。内部だけで処理しているのではないかという疑念を払拭し、安心して市民の利益のために仕事ができる環境を作ります。
次に、私が判断基準を示すことで、部長や課長レベルで判断できる仕組みづくりを進めます。そうして私が本来もっとやらなければいけない、八代を発展させるための時間を捻出します。今は残念ながら、様々な問題への対応に多くの時間を費やしています。

市政改革の柱

改革の具体的な柱として、以下の3つを推進します。

  1. コンプライアンス改革: 先ほど述べた通り、外部公益通報制度を導入し、信頼される組織づくりを進めます。
  2. 情報公開と行政評価: 市役所の全事業について、どのようなことにいくら使ったのかをホームページ上で公開し、市民の皆様が直接評価できる仕組みを構築します。これはすでに一部の事業で始まっていますが、来年度からは全事業で実施します。税金の使い方がこれで良かったのかを市民がチェックし、意見を寄せることで、より良い使い道を考えていきます。先日、キャッシュレスのポイント還元事業を見ましたが、経費率が17%でした。コールセンターの設置やのぼり旗の作成など、本当に必要だったのか。細部を見ていくことで、改善の余地は見つかるはずです。
  3. 市民要望の見える化: 各地区から寄せられた要望が、今どのような進捗状況にあるのかを公開するシステムを構築します。人口減少により議員を選出できない地域が増える中、どの地域の声も公平に扱われていることを明らかにし、不安を解消します。これもすでに市では要望を管理していますが、公表はされていません。これを公開することで、透明性の高い行政運営を目指します。

八代の発展ビジョン

こうした仕組みづくりを進めた上で、八代の発展のために取り組みたいことはたくさんあります。

  • 港: 松木会長がおっしゃったように、八代港を国際港としてさらに伸ばしていきます。クルーズ船の寄港は回復してきましたが、八代市内、例えば日奈久などにお客様が訪れるような努力が必要です。
  • 若者流出対策: 鏡町の工業用地に優良企業を誘致する、あるいは地場企業が事業を拡大できるようインフラ整備を手伝うなど、若者が働ける場所を創出します。
  • 中心市街地: アーケードの活性化は難しい課題ですが、若い担い手が新規参入しやすいよう、行政の信用力を活かして支援策を考えていきます。
  • 日奈久温泉街: 従来の団体旅行は期待できません。これからは、芸術家や文化の担い手といった若い創作者たちが滞在・創作活動できるような街づくりを進め、新たな魅力を創造したいと考えています。
  • 農業: 若手の農業者には熱い人が多くいます。廃棄トマトを活用したイベントなど、彼らの挑戦を行政として後押ししていきます。
  • 林業: 山は荒れていますが、意欲ある若い担い手もいます。地域おこし協力隊などを活用し、山に興味がある若者を八代に呼び込みます。また、坂本などでミツバチの聖域(サンクチュアリ)を作りたいという養蜂家の方もいます。多様な植物が育つ環境は、人間にとっても素晴らしい場所になるはずです。

財源確保と市民への呼びかけ

これらの事業を実現するためには財源が必要です。先進的な事業提案で国の補助金を獲得する、事業見直しで財源を捻出する、そして八代の強みである「ふるさと納税」をさらに活用します。昨年、八代市のふるさと納税寄付金額は35億円で、全国65位という素晴らしい実績でした。職員の努力に感謝します。
最後に、皆様に3つのお願いがあります。 一つは、市政を厳しくチェックしていただきたいということです。先ほど述べた行政評価システムなどを活用してください。 二つ目は、皆様自らが八代のために行動していただきたいということです。市長一人でできることには限りがあります。市民の皆さんが行動すれば、大きなことが成し遂げられます。 そして三つ目は、自助による災害への備えです。行政の対応には限界があります。今回の災害の経験を活かし、自分たちでできる備えは何かを考え、実行していただきたい。
皆様が参加し、考え、行動することで、八代は必ずもっと明るく、良くなっていくと信じています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
市長の熱意あふれる講演が終わり、プログラムは市民との直接対話の場である質疑応答の時間に移った。
 

講演に続き、市長および来賓と市民が直接意見を交わす質疑応答のセッションが開始された。
質問者1: せっかく今日は松木会長もおいでですので、ご意見を申し上げます。一つは「八代は汚いね」ということです。特に国道3号線の中央分離帯の雑草や、工業地帯へ向かう道路の植栽がひどい状況です。台風が来れば停電の原因にもなりかねません。インバウンド客を迎えるおもてなしとしても、少しずつでも街を綺麗にしていくべきではないでしょうか。行政任せではなく、我々民間も協力したいと思っています。 もう一つはアーケード街についてです。シャッターが閉まっている店が多いですが、若い人たちが店を出せるような行政の支援があれば、一歩ずつでも進むのではないでしょうか。市長が言われたように4年かかるかもしれませんが、皆が気持ちを切り替えてやっていくことが大事だと思います。
質問者2: 私は球磨川の被災者です。災害復旧が進む中で、税務署と国交省の見解の違いにより、多額の所得税を払うことになりそうな状況です。市議会でも質問があり、市長からも被災者が困らないようにという答弁があったので期待していましたが、最終的には国との話なので、どうにもならないのでしょうか。なんとか助けていただけないかと考えています。 もう一つは、坂本町の工事についてです。現在、上下水道の工事が進んでいますが、下水道に関しては「自分たちの管轄ではない」と言われ、昔からの垂れ流し状態がそのままになっています。嵩上げしたのに現状復帰で良いのか。市、県、国のどこに話を持っていけばいいのか分からず、たらい回しにされてしまいます。市役所の方で、ある程度の取りまとめ窓口のような役割を担っていただけないでしょうか。
質問者3(92歳・女性): 超高齢者からのお願いです。私たち高齢者が利用する交通機関はバスです。しかし、バス停には椅子も屋根もなく、暑い日、寒い日、雨の日に10分待っているのは本当につらいです。特に足が不自由だと早く家を出なければならず、待つ時間が長くなります。バスに乗っているのはほとんどがお年寄りです。もう少し高齢者の身になって、バス停の環境を考えていただきたいのです。 もう一つ、市議会にはとてもよく聞こえる補聴器が準備されています。八代市厚生会館(ハーモニーホール)のような公共の施設でも、ああいった補聴器を準備していただくことはできないでしょうか。自分の補聴器では音が割れて聞き取りにくいことがあります。この二つを、ぜひ検討していただきたいです。
質問者4: 以前、8月にこの会場であった集会で、鏡町の小学2年生から託された「公園のターザンロープを修理してほしい」という手紙があったかと思います。そのターザンロープは、もう修理は終わったのでしょうか。
 
小野市長: はい、ご質問ありがとうございます。小野市長は、各質問・要望に対し、以下のように順次回答した。
まず、街の美化に関するご意見については、国道の中央分離帯の管理は県になりますが、ご指摘の点はしっかりとお伝えします。県も財政が厳しい状況ですが、伝え続けることが大事ですので、これはやっていきたいと思います。
次に、坂本町の税務問題と上下水道の問題についてです。税務問題は、直接私のところにもお越しいただき、国交省からも説明を受けましたが、担当者レベルでの説明が全く異なっていたという状況です。市の権限が及ばない部分もありますが、我々として何ができるか、引き続き考えてまいります。下水道に関しても、現状復旧がどのような経緯で決まったのか、まずは私の方で確認をさせていただきます。
続いて、92歳の女性の方からのご要望ですが、貴重なご意見ありがとうございます。バス停の環境、特に待つ場所の整備は重要だと認識しています。ベンチの設置など、何ができるか検討したいと思います。また、補聴器の件ですが、当事者の方にしか分からないご不便があるのだと改めて感じました。まず市議会でどのような機器を導入しているのかを確認し、ハーモニーホールのような公共施設で備え付けが可能か、研究させていただきます。
最後に、公園の遊具に関するご質問ですが、ご指摘の件は私も確認しました。担当の説明によると、メンテナンスのために一時的に使えなかった時期はあったそうですが、現在は使えるようになっているとのことです。小学生からの声は忘れずに対応しております。
活発な質疑応答が終了し、フォーラムは閉会の時間を迎えることとなった。
 

フォーラムの終わりを告げ、司会者による閉会の挨拶が行われた。来場者への感謝と、今後の市政への協力が呼びかけられ、盛況のうちに幕を閉じた。
高野 愛 氏(司会): ありがとうございました。それでは、以上をもちまして質疑応答を終了とさせていただきます。本日は長時間にわたりましてご清聴、大変にありがとうございました。
小野大輔は今後も皆様方にお約束いたしました通りの誠実な市政を進めてまいります。どうかこれからも皆様方に見守っていただきますようお願い申し上げまして、本日の第1回小野大輔フォーラムを閉会とさせていただきます。本当にありがとうございました。
皆様をお帰りの際、登壇者にて見送りをさせていただきたいと思います。どうぞお気をつけてお帰りくださいませ。本日は誠にありがとうございました。

 

八代市は、港湾機能の拡張、世界的企業の波及効果、そして一次産業の構造転換という三つの巨大な潮流が交差する、稀有な戦略的岐路に立っている。本提言書は、この歴史的転換点を確実な飛躍へと繋げるための羅針盤として策定されたものである。
その基盤となるのは、先日開催された「第1回小野大輔フォーラム」における、小野大輔市長、八代市の経済界を牽引してこられた株式会社藤永組の藤永勝会長、株式会社松木の松木一会長、そして多くの市民の皆様による活発な議論である。このフォーラムは、八代市が直面する課題と、内に秘めた豊かな可能性について、行政、経済界、市民が立場を超えて共通認識を形成する画期的な場となった。本提言は、そこで示された熱意と洞察を統合し、八代市のポテンシャルを最大限に引き出すための具体的なビジョンと戦略的行動計画として提示するものである。
 

持続的な成長軌道を描くためには、現状を正確に分析し、その強み、機会、そして成長を阻害するボトルネックを明確に認識することが不可欠である。「第1回小野大輔フォーラム」で共有された多角的な視点に基づき、八代市の現在地を解き明かす。

1.1 歴史的エンジンとしての八代港の再評価

松木一氏が指摘したように、八代の発展はいつの時代も「港と共にあった」。古代の「徳地津」が世界との窓口であった時代から、近代においては日本セメントや日本製紙の進出を支え、市の産業基盤を形成してきた。
現代においてもその重要性は揺るぎない。水深14メートルバースの完成は、大型クルーズ船の寄港や台湾とのコンテナ定期航路の就航を可能にし、八代港を九州における国際物流のハブへと押し上げた。この歴史的連続性の中に、八代の経済的DNAが刻まれており、港は未来の発展においても中核的なエンジンであり続けると再評価すべきである。

1.2 産業構造の転換と新たな成長機会

八代市は今、旧来の産業構造が解体され、次世代の成長エンジンが萌芽するダイナミックな転換期にある。この変化はリスクではなく、的確に捉えれば飛躍的な成長機会となる。

  • 日本製紙の事業転換: デジタル化による紙需要の変化に対応し、日本製紙八代工場は、成長が見込まれる家庭紙の輸出拠点へと大きく舵を切った。2028年の本格稼働を目指すこの転換は、八代港の物流機能を最大限に活用する戦略であり、地域経済の安定化に大きく貢献する。
  • TSMCの波及効果: 世界最大級の半導体メーカーTSMCの熊本進出は、八代市にも絶大な経済的インパクトをもたらしている。八代港は、高圧ガス、化学薬品、建設資材といったTSMC関連部材の重要な物流拠点として機能しており、この流れを加速させるため、鏡地区には25ヘクタールの新工業団地の造成が計画されている。これは、先端技術関連企業の集積を促す絶好の機会である。
  • 林業の高付加価値化: 八代港は現在、原木の輸出量で国内第2位を誇るが、その多くは付加価値の低い原料輸出に留まっている。この課題に対し、国内最大手の木材加工会社である中国木材が、大規模な加工工場の進出を計画している(2029年頃操業予定、約260人規模の新規雇用)。これは、地域の林業を**「原料輸出型」から高付加価値な「製品加工型」へと転換**させ、県南の豊かな森林資源を活かした新たな産業の柱を築く歴史的な契機となる。

1.3 地域資産の潜在的ポテンシャル

八代市には、まだその価値が十分に引き出されていない魅力的な地域資産が数多く存在する。

  • 日奈久温泉エリア: 藤永勝氏が提唱する**「花と音楽の町」構想**(ブーゲンビリア通り、桜の植樹、音楽祭)と、小野市長が提案する**「芸術家や文化人が滞在・創作する拠点」**としての機能を組み合わせることで、日奈久は単なる湯治場から、文化と創造性が薫るユニークなデスティネーションへと進化する大きなポテンシャルを秘めている。
  • 革新的な農業: 日本一の生産量を誇る冬春トマトは、八代市の強力なブランドである。若手農業者たちが中心となり、フードロス問題への意識喚起を兼ねて規格外となる**「排気トマト」を活用したユニークなイベント**を開催するなど、先進的な取り組みが始まっている。これは、農業の魅力を発信し、食と農をテーマにした新しい観光価値を創造する動きとして高く評価できる。
  • 豊かな自然環境: 養蜂家の西岡氏の事業は、日本の農業生産に不可欠な受粉を支える重要な役割を担っており、八代の豊かな自然がその基盤となっている。氏が構想する**「ミツバチのサンクチュアリ(聖域)」**というアイデアは、生態系保全の重要性を象徴すると同時に、自然の豊かさを学ぶエコツーリズムの拠点として、八代の自然環境そのものを観光資源化する独創的なプロジェクトへと発展する可能性を示唆している。

1.4 市民生活における共通課題

フォーラムでの議論を通じて、成長を阻害するボトルネックとも言うべき、市民生活における共通課題も浮き彫りになった。

  • 若者世代の市外流出と、それに伴う地域活力の低下。
  • 中心市街地(アーケード)の空洞化と賑わいの喪失。
  • 頻発する自然災害への備えと、複雑で分かりにくい復旧プロセス。
  • 高齢者をはじめとする市民の生活の質(QOL)向上の必要性(公共交通、景観美化、情報保障など)。

これらの現状認識は、八代市が未来へ向けて飛躍するために取り組むべき戦略の方向性を明確に示している。次章では、これらの分析に基づき、具体的な活性化戦略を提案する。
 

八代市の現状分析から導き出された課題を克服し、機会を最大化するため、ここに4つの戦略的な柱を提案する。これらの戦略はそれぞれが独立しているのではなく、相互に連携し、相乗効果を生み出すことで、八代市の総合的な発展と市民生活の質の向上を目指すものである。特に、経済および観光戦略(第1〜3の柱)の成功は、第4の柱に掲げる「市民参加を核としたまちづくり」によって醸成される行政への信頼と市民の主体的な参画に懸かっていることを、まず強調したい。

2.1. 【第1の柱】国際港湾都市としての価値最大化

八代港を単なる物流拠点から、市のブランド価値を高め、経済を牽引する戦略的資産へと昇華させるための施策を断行する。

  • 戦略的ポート・ブランディングの推進: 国際的な知名度不足という課題に対し、松木氏が提案した**「九州中央港」**のような、九州の中心に位置する地理的優位性を直感的に伝える名称への変更は、ブランド価値を飛躍させるための必須の第一歩と位置づけるべきである。国内外の荷主や船会社に対する訴求力を高め、八代港の競争力を抜本的に強化する。
  • 災害に強い物流ネットワークの構築: 地震発生時の液状化リスクに備え、松木氏が提言した**「八代インターチェンジから八代港までの高速道路延伸」**の実現を国や県と共に追求する。これは、平時における物流の効率化・高速化に貢献するだけでなく、災害発生時には九州全域への救援物資輸送を担う「命の道」として、国土強靭化の観点からも極めて重要である。
  • 港湾と連携した観光誘致の強化: 回復傾向にあるクルーズ船の寄港客が熊本市方面へ流出している現状を打破するため、**日奈久温泉の「アーティスト・イン・レジデンス」やトマト産地ならではのアグリツーリズムを組み込んだ、寄港客向けのプレミアム体験ツアーを造成する。**港を起点に、八代ならではの文化・食を体験できるプログラムを開発・提供し、地域内への経済効果を最大化する。

2.2. 【第2の柱】次世代産業の誘致と育成

持続的な経済成長を牽引する強固な産業エコシステムを構築し、若者が地元で働ける魅力的な雇用機会を創出する。

  • TSMC関連産業集積の加速: 鏡地区の新工業団地は、八代港の物流能力(第1の柱)との近接性を最大限に活かし、TSMCに関連する先端技術企業や部材・装置産業の誘致を戦略的に行う。行政がワンストップで相談に応じる体制を構築し、迅速な企業立地を支援する。
  • 高付加価値型資源産業の創出: 中国木材の進出を起爆剤とし、県南の豊富な森林資源と**八代港の輸出機能(第1の柱)**を掛け合わせ、木材加工、バイオマスエネルギーなど、川上から川下までを網羅する高付加価値型産業クラスターの形成を目指す。これにより、林業の6次産業化を推進し、地域内での経済循環を創出する。
  • 地元企業の事業構造転換支援: 日本製紙の事業転換をモデルケースとし、市内の中小企業が市場環境の変化に適応し、新たな事業分野へ挑戦することを後押しする。技術指導、専門家派遣、設備投資への補助金制度などを創設し、地域全体の産業競争力を底上げする。

2.3. 【第3の柱】「体験価値」を軸とした観光振興

単に見るだけの観光から、来訪者の記憶に深く刻まれる「体験価値」を提供する観光へと転換し、リピーターの創出と地域への愛着を醸成する。

  • 日奈久温泉エリア再創造プロジェクト: 「花と音楽」をテーマとした景観整備を進めるとともに、国内外の芸術家が一定期間滞在しながら創作活動を行う**「アーティスト・イン・レジデンス」制度**を導入する。これにより、日奈久温泉を文化的で創造的な人々が集う温泉街へと再生させ、新たな魅力を発信する。
  • 食と農の体験プログラム開発: 日本一のトマト産地としてのブランド力を最大限に活用し、収穫体験、トマトを使った加工品開発ワークショップ、若手農業者と消費者の交流イベントなど、八代ならではの「食」と「農」を五感で楽しむアグリツーリズムを本格的に推進する。
  • エコツーリズムの推進: 「ミツバチのサンクチュアリ」構想を発展させ、専門ガイドと共に八代の豊かな自然環境や生態系の仕組みを学ぶことができる自然観察ツアーや環境教育プログラムを整備する。これにより、環境保全と観光振興を両立させる持続可能な観光モデルを構築する。

2.4. 【第4の柱】市民参加を核とした持続可能なまちづくり

行政と市民が信頼に基づき協働する「共創」のまちづくりを実現するため、徹底した透明性の確保と市民の主体的な参画を促す仕組みを構築する。

  • 行政運営の徹底的な透明化: 小野市長が掲げる2つの改革を断行し、市民からの信頼を再構築する。
    1. 行政評価システム: 市が実施する全事業のコストと内容を公開し、市民がその成果を直接評価できる仕組みを構築する。
    2. 要望管理システム: 各地区から寄せられる行政への要望とその対応状況・進捗を全て公開し、プロセスの公平性と透明性を担保する。
  • 市民の主体的な行動の促進: 「市民と行政が協力して街をきれいにする」といった市民からの自発的な提案を積極的に支援する。清掃活動や防災訓練、地域の魅力発信など、**市民が主体的に行動を起こすためのプラットフォーム(情報共有ツール、活動支援補助など)**を行政が提供し、市民の力をまちづくりに活かす。
  • 生活の質(QOL)向上へのきめ細やかな対応: バス停の待合環境改善、公共施設での補聴器貸し出し、アーケードの空き店舗活用支援など、市民から寄せられる具体的な生活課題への迅速な対応こそ、行政への信頼を再構築し、共創の好循環を生み出す試金石となる。一つひとつの課題解決を積み重ねることが、強固な協働の基盤を築く。

これら4つの戦略柱は、個別に進めるのではなく、有機的に連携させながら実行することで初めて最大の効果を発揮する。この統合的アプローチこそが、八代市の輝かしい未来を拓く唯一の道筋である。
 

「第1回小野大輔フォーラム」は、八代市が持つ測り知れないポテンシャルを改めて浮き彫りにした。歴史が育んだ国際港湾、時代の変化に対応し進化を続ける産業、そして豊かな自然と文化という、他に類を見ない資産の数々。これらは、八代市の未来を照らす確かな光である。
本提言書で示した4つの戦略、すなわち**「国際港湾都市としての価値最大化」「次世代産業の育成」「『体験価値』を軸とした観光振興」、そしてそれら全ての土台となる「市民参加を核とした持続可能なまちづくり」**は、その光を現実の発展へと導くための具体的な道筋である。これらの戦略は、八代の強みを伸ばし、弱みを克服し、市民一人ひとりが豊かさを実感できる社会を実現するための設計図に他ならない。
フォーラムの中で藤永勝氏が川島知事の言葉として引用された「期待値を超えよう。そうすれば次の舞台が用意される」という言葉は、これからの八代市が目指すべき姿勢を的確に示している。行政、企業、そして市民一人ひとりが当事者として主体的に行動し、互いの知恵と力を結集して未来を創造していく**「共創」**の精神こそが、八代市の持続的発展を実現する最も重要な鍵である。
この提言が、八代に関わる全ての皆様が未来への一歩を踏み出すための共通の土台となることを心から願っている。

「え、あの八代が?」市長と経済人が語った、熊本県八代市の意外すぎる未来図

人口減少、中心市街地の空洞化…。日本の多くの地方都市が直面する課題を耳にすると、どこか諦めにも似た停滞したイメージを抱いてしまうかもしれません。熊本県八代市も、そうした都市の一つとして見られてきたのではないでしょうか。
しかし先日、市内で行われた「第1回小野大輔のフォーラム」で語られたのは、過去を嘆く言葉ではありませんでした。小野大輔市長と、地域経済を牽引してきた経済人たちが壇上に立ち、驚くほど具体的で、希望に満ちた未来へのビジョンを明らかにしたのです。
この記事では、フォーラムでの議論から見えてきた、八代市の「意外な未来図」を形作る4つのインパクトあるポイントを解説します。これまでとは違う、八代市の新たな可能性が見えてくるはずです。

1. 知ってた?八代は日本第2位の「木材輸出港」だった

フォーラムで経済界を代表して登壇した株式会社松木会長の松木一之氏が明かした事実は、多くの聴衆にとって驚きだったかもしれません。実は、八代港は日本で2番目に大きな木材の輸出港なのです。
年間約50億円相当の原木がここから輸出されており、これは日本の木材輸出総額の約1割を占めます。主な輸出先は、中国、台湾、そして韓国です。しかし、この話の本当の重要性はここから始まります。
さらに大きな変化が訪れようとしています。日本最大級の木材加工会社である中国木材株式会社(広島県呉市)が、八代に大規模な工場の建設を計画しているのです。これが実現すれば、これまで価値の低い「素材」として原木のまま輸出されていた木材が、付加価値の高い「製品」へと加工されてから送り出されることになります。2029年の操業開始を目指すこの新工場は約260人の新規雇用を生み出す見込みであり、これは八代が単なる積み出し港から、価値を創造する産業拠点へと戦略的に転換することを意味しています。

2. 問題は「人」ではなかった。市長が語る市役所改革の核心

「八代市役所の職員は、真面目で優秀です」。小野大輔市長は、就任から3ヶ月の所感をこう語りました。県庁での勤務経験と比較しても遜色ない、とまで評価しています。では、なぜこれまで行政が停滞しているように見えたのでしょうか。
市長の診断は、驚くほど本質的でした。問題は職員個人の能力ではなく、市民のために積極的に行動することをためらわせる旧来の「仕組み」にあると結論づけたのです。職員にさらなる努力を求めるのではなく、仕組みそのものを変えなければならない。このリーダーシップ哲学こそが、改革の核心です。
その具体的な第一歩として、市長は弁護士などが対応する「完全なる第三者」による外部通報制度の設立を明言しました。「内部だけで処理しているのではないか」という疑念を払拭し、職員が安心して正しいと信じる仕事に取り組める信頼関係を築くためです。個人の資質を問うのではなく、誰もが力を発揮できる健全なシステムを構築すること。それが改革の出発点だと位置づけています。

3. 税金の使い道を全公開。市民が全事業を「評価」する時代へ

システムによって組織を改革するという思想は、市役所の内部だけに留まりません。小野市長は、市民との関係においても、透明性と信頼を担保する新たな仕組みを導入しようとしています。それが「行政評価システム」です。
このシステムは、市が行う全ての事業について、その目的や内容、費用をウェブサイトで公開し、市民自身が直接「評価」できる機能を持つものです。市長は具体例として、過去に実施された約2億円のキャッシュレス・ポイント還元事業を挙げました。この事業では広告費などに全体の17%もの経費が使われていた事実を指摘し、「もっと市民に直接還元できる方法があったのではないか」と問いかけます。
この取り組みは、単なる情報公開ではありません。前述の内部改革が職員に「安心して正しいことができる環境」を提供するものなら、この外部への評価システムは市民に「税金の使われ方を判断し、声を上げる権利」を与えるもの。内部と外部、両輪の改革によって説明責任を果たそうとする、直接民主主義への大きな一歩と言えるでしょう。

4. 主役はトマトと蜂とアーティスト?未来を拓くクリエイティブな挑戦

大きな産業戦略や行政改革と並行して、八代の未来は地域に根ざした市民の情熱によっても育まれています。フォーラムでは、トップダウンの計画を補完する、多彩な「グラウンドアップ(草の根)」の挑戦が紹介されました。これらは、八代の未来が画一的ではなく、多様な魅力を持つことを示唆しています。
例えば、若手農家が始めた「アグリスポーツ大会」。ここでは、規格外で廃棄されてしまうトマトを使い、野球のストラックアウトの的当てを行うなど、楽しみながらフードロスの問題を伝えています。また、日本の農業を文字通り支える養蜂家の西岡氏は、八代の山間部に蜂たちが安心して生息できる「三バチのサンクチュアリ(聖域)」を作るという壮大な構想を抱いています。
さらに、歴史ある日奈久温泉は、単なる観光地ではなく「芸術や文化、創作活動を行う人たちが滞在できる地域」へと生まれ変わるビジョンが語られました。多様なクリエイターを惹きつけることで、新しい人の流れとエネルギーを生み出そうというのです。こうした市民一人ひとりのユニークな挑戦が、八代の未来をより豊かで多角的なものにしていきます。
フォーラムで語られたのは、過去の延長線上にはない、新しい八代の姿でした。隠れた産業のポテンシャルを開花させ、行政の仕組みを根本から見直し、市民一人ひとりのクリエイティブな挑戦を後押しする。衰退から発展へ、ベクトルを大きく転換させようとする強い意志がそこにはありました。
フォーラムの冒頭、株式会社藤永組の藤永勝俊会長が、蒲島知事から贈られたという言葉を紹介しました。この言葉こそ、今の八代市の挑戦を象徴しているように思えます。
「期待値を超えよう。そうすれば次の舞台が用意される」
八代が描こうとしているのは、単なる再生の物語ではありません。市民と行政が一体となり、「期待値」をはるかに超える未来を創造していく、新たな挑戦の物語なのです。
あなたのまちは、どんな「意外な未来」を描けるでしょうか?


先生、教えて!フォーラムで語られた八代市の未来

導入:八代市の未来について学ぼう

生徒:「先生、この前、八代の未来について考えるフォーラムがあったって聞きました。なんだか難しそうな話だったみたいですけど、実際はどんな話があったんですか?」
先生:「お、良いところに目をつけたね。確かに少し専門的な話もあったけど、これからの八代にとってすごく大切な話がたくさん出たんだ。大丈夫、重要なポイントを一緒に分かりやすく見ていこうじゃないか。」
 

1. 地域からの挑戦:日奈久を「花と音楽の町」に

生徒:「はい、お願いします!まずは、どんな話から始まったんですか?」
先生:「最初は、地域のリーダーの一人である藤永会長から、歴史ある温泉街・日奈久(ひなぐ)地区を元気にしようという、とても素敵な挑戦についての話だったよ。」
生徒:「日奈久の挑戦ですか!具体的にはどんなことを?」
先生:「うん。日奈久を**『花と音楽の町』**というテーマで盛り上げよう、という取り組みだ。具体的な活動はこんな感じだよ。」

  • 花いっぱい運動 熊本県から花の苗や球根をもらって、地域の人たちで協力しながら空き地などに植えているんだ。町中を花で彩ることで、人の心も明るくしようという活動だね。
  • 音楽祭の開催 日奈久温泉神社の境内にある土俵を使って、音楽祭を開いたそうだ。しかも、八代市出身の有名なクラシック歌手、岩崎孝(いわさき たかし)さんを招いてね。神社の土俵をステージにするなんて、ユニークで面白い発想だろ?地域にあるものを最大限に活かす、素晴らしい知恵だね。
  • 地域の宝の活用 地域に住む吉田さんという方が、なんと20年近くもかけて育ててきた**「ブーゲンビリア通り」**があるんだ。この美しい通りを、もっと多くの人に楽しんでもらえる観光資源として整備しているそうだよ。

生徒:「すごい!地域の人たちが自分たちの手で町を魅力的にしようとしているんですね。」
先生:「その通り。そして、藤永会長が大切にしている心構えが印象的だった。それは、『なぜ衰退したのか』という過去の原因を探すのではなく、**『これからどうすれば栄えるか』**という未来に目を向けて取り組む、という考え方だ。」
生徒:「前向きでいいですね!」
先生:「そうだね。最後に、蒲島知事の言葉を引用していたのも心に残ったよ。『期待値を超えよう。そうすれば次の舞台が用意される』。この言葉通り、日奈久の皆さんは期待を超える挑戦を続けているんだ。」
先生:「地域の人たちが自分たちの手で未来を描こうとしている、素晴らしい挑戦だよね。そして、こうした地域の熱意と並行して、八代全体を大きく変えるダイナミックな動きも始まっているんだ。その鍵を握るのが『港』なんだよ。」
 

2. 八代発展の鍵:港が拓く未来の可能性

生徒:「八代にとって、港がそんなに大事なんですか?」
先生:「ああ、とても重要なんだ。次に登壇した松木会長は、『八代の発展は港が鍵を握る』という視点から、非常にダイナミックな未来像を語ってくれたんだ。その理由を歴史から未来まで、3つのポイントで見ていこう。」

2.1. 港の歴史と現在

先生:「八代港は、古くは『徳淵の津(とくぶちのつ)』と呼ばれ、海外との交易で栄えた歴史がある。近代に入ってからは、日本セメントや日本製紙といった大きな工場ができて、工業港として発展した。そして今では、水深14mの岸壁が整備され、大きなクルーズ船も寄港する国際的な港へと成長を遂げているんだ。」

2.2. これから港で起こる3つの大きな変化

先生:「そして、ここからが本題だ。松木会長は、これから八代港で起こる3つの大きな変化を挙げていた。これが八代の未来を大きく左右するんだよ。」
プロジェクト名
内容
八代への影響
日本製紙の事業転換
紙の需要変化に対応し、新聞用紙から**家庭紙(輸出用)**の生産へ。2028年に向けて大規模な設備投資が進行中。
輸出拠点としての港の役割がさらに重要になる。
TSMCの熊本進出
半導体工場で使われる高圧ガスや化学薬品、建設資材などが八代港を利用。関連企業を誘致するため、市内に25ヘクタールの新工業団地を造成中。
熊本県北だけでなく、県南の八代にも経済効果が波及する。
中国木材の進出計画
日本第2位の木材輸出港である八代港で、原木を製品に加工する国内最大手の工場を誘致。
付加価値の高い製品を生み出し、約260人の新規雇用が期待される。
先生:「そして、この港の発展、特にTSMC関連の工業団地こそが、後で話す小野市長が目指す『若者の働く場所を増やす』という目標に直結してくるんだ。港の未来は、君たち世代の未来でもあるんだよ。」

2.3. 港の課題と夢

先生:「ただ、良い話ばかりではない。課題として、八代港の国際的な知名度がまだ低いことを指摘していた。その上で、松木会長は個人の夢としてこんな提案をしていたよ。」

  • 九州中央港への改名提案 「八代」という名前よりも、九州の中心にあることをアピールしてはどうか、というアイデアだ。
  • 高速道路の延伸 災害時に物資をスムーズに運ぶため、八代インターチェンジから港まで直接つながる高速道路を整備できないか、という壮大な構想だ。

生徒:「港にそんな大きな未来があるなんて驚きました。こんな大きな変化に対して、市長さんはどんなことを考えているんですか?」
 

3. 新しい市政の姿:市民のための市役所改革

先生:「いい質問だね。次に講演した小野市長は、そうした発展の土台となる『市役所の改革』から始めたい、と語っていたよ。」
生徒:「市長さんは就任してまず何から始めたんですか?」
先生:「まずは、市役所の『仕組み』を変えることからだ。市長は、市役所の職員は優秀で真面目だと評価した上で、こう課題を認識していた。」
課題認識 職員が**「市民のために行動できる」モチベーションや環境づくり**が、これまで不足していた可能性がある。
先生:「その課題を解決するために、具体的な2つの改革案を打ち出しているんだ。」

  • コンプライアンス改革 職員が「これはおかしい」と感じた時に、安心して声を上げられるように、外部の弁護士などが担当する**「公益通報の第三者窓口」**を新年度から設置する計画だ。組織の風通しを良くする狙いだね。
  • 情報公開と市民参加の推進 市が行う全ての事業の内容と予算をホームページで公開し、市民が直接評価できる**「行政評価システム」**を本格的に導入するそうだ。税金が正しく使われているか、みんなでチェックできるようにするんだ。

生徒:「なるほど。職員が働きやすい環境と、市民が市政をチェックできる仕組みを整えるんですね。」
先生:「その通り。これらの改革の目的は、市長一人が全ての判断をしなくても、組織として良い仕事ができる仕組みを作ることにある。そうすることで、市長自身は八代の未来を創るための戦略的な仕事にもっと時間を使えるようになる、というわけだ。ただ仕組みを作るだけじゃない。市長が『職員は優秀だ』と信頼しているからこそできる改革なんだ。すごいことだと思わないか?」
生徒:「市役所の中身を変えることから始めているんですね。じゃあ、市長が本当にやりたい八代の未来像ってどんなものなんですか?」
 

4. 八代の未来図:若者、産業、そして地域資源

先生:「では、市長が語った具体的な未来図を見ていこう。特に、君たちのような若い世代に関わる話もたくさんあったよ。」
生徒:「若者が減っている問題や、もっと面白い街にするためのアイデアについて、市長さんは何か言っていましたか?」
先生:「もちろん。様々な分野で、具体的でワクワクするようなアイデアが語られたんだ。」

  • 若者流出対策 八代インターチェンジの北側にできる新しい工業団地に、給料や待遇の良い企業を誘致し、若者が地元で働ける場所を増やすことを目指している。
  • 観光振興(日奈久) これまでの伝統的な団体旅行に頼るのではなく、芸術家やクリエイターが滞在して創作活動ができるような、新しい温泉街づくりを目指すというアイデアだ。藤永会長が話していた『花と音楽の町』という地域からの動きと、市長が考えている『芸術家が滞在する温泉街』というビジョン。この二つが合わされば、日奈久はもっと面白くなると思わないかい?
  • 農業の活性化 意欲ある若手農業者の挑戦を後押しする姿勢も示された。例えば、こんなユニークな取り組みがある。
    • 鏡地区を中心とした「ファームラボやつしろ」という若手農業者のグループが、廃棄されてしまうトマトを使って的当てゲームなどを行う**「アグリスポーツ大会」**を開催。
    • 日本の農業に不可欠なミツバチを守るため、養蜂家の西岡さんが構想する**「ミツバチの聖域(サンクチュアリ)」**づくりを応援する。
  • 財源の確保 こうしたアイデアを実現するためにはお金が必要だ。そこで活用するのが**「ふるさと納税」**だよ。すごいことだと思わないか?全国に1700以上ある自治体の中で65位、35億円もの寄付を集めているんだ。これは八代の産品や取り組みが全国から注目されている証拠だし、未来への大きな力になる。

生徒:「未来が楽しみになるようなアイデアがたくさんあるんですね!でも、災害のような心配なこともありますよね?」
 

5. 私たちの役割:災害に備え、未来を共創する

先生:「その通り。市長は最後に、市民である私たち一人ひとりの役割について、強くメッセージを発信していた。まず核心として、『行政ができることには限界がある』と率直に語っていた。市役所が全てを解決する万能の存在ではない、ということだ。その上で、市民である私たちに、未来のために行動してほしいと3つのことをお願いしていた。これは八代に住む全員への宿題と言えるだろう。」

  1. 市政をチェックすること 行政評価システムなどを通じて、自分たちの税金がどう使われているかを厳しく見てほしい。
  2. 自ら行動すること 市長任せ、行政任せにせず、自分にできることで八代を良くするアクションを起こしてほしい。
  3. 災害に備えること 昨年の災害の教訓を活かし、次の出水期までに自分でできる備え(例えば、浸水を防ぐための止水板の設置など)を進めてほしい。

 

まとめ:未来はみんなでつくるもの

生徒:「なるほど…。フォーラム全体の話を聞いて、八代の未来は、市長さんや市役所の人たちだけじゃなく、僕たち市民一人ひとりの行動にかかっているんだってことがよく分かりました!」
先生:「その通りだね。まさにそれが、このフォーラムで共有された一番大切なメッセージだよ。みんなで考え、行動することが、明るい八代につながっていくんだ。」












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